新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更に伴う労災保険の取扱いについて
2023.03.29
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)は、5月8日から感染症法上の5類感染症に位置付けられる予定になっています。今回、5類感染症に位置付けられた後に、業務に起因して新型コロナに感染したものであると認められる場合の業務上災害の取扱いについて、厚生労働省がQ&Aを更新しました。
更新されたQ&Aは以下の通りです。5類感染症に位置付けられた後も、業務上災害、そして、労災保険の給付対象になりうることは変わりありませんが、労災保険率に影響するメリット制には反映されることになります。

【Q】 労働者が新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となりますか。
【A】業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。
 また、新型コロナウイルス感染症による症状が持続し(罹患後症状(※)があり)、療養や休業が必要と認められる場合にも、労災保険給付の対象となります。
 なお、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に変更された後においても、この取扱いに変更はありません。
 ※ 罹患後症状については、次の資料をご覧ください。
 https://www.mhlw.go.jp/content/001001545.pdf 
 請求の手続等については、事業場を管轄する労働基準監督署にご相談ください。

【Q】医師、看護師などの医療従事者や介護従事者が、新型コロナウイルスに感染した場合の取扱いはどのようになりますか。
【A】患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。
 なお、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に変更された後においても、この取扱いに変更はありません。

【Q】医療従事者や介護従事者以外の労働者が、新型コロナウイルスに感染した場合の取扱いはどのようになりますか。
【A】新型コロナウイルス感染症についても、他の疾病と同様、個別の事案ごとに業務の実情を調査の上、業務との関連性(業務起因性)が認められる場合には、労災保険給付の対象となります。
 感染経路が判明し、感染が業務によるものである場合については、労災保険給付の対象となります。
  感染経路が判明しない場合であっても、労働基準監督署において、個別の事案ごとに調査し、労災保険給付の対象となるか否かを判断することとなります。
 なお、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に変更された後においても、この取扱いに変更はありません。

【Q】新型コロナウイルス感染症に関する労災保険給付があった場合、労災保険料に影響があるのでしょうか。
【A】労災保険制度においては、個々の事業ごとに、労災保険給付の多寡により、給付があった年度の翌々年度以降の労災保険料等を増減させるメリット制を設けています。
 他方、法に基づき入院措置や外出自粛などが行われる感染症法上の「新型コロナウイルス感染症」に関連する給付は、全ての業種においてメリット制の対象外とし、労災保険料に影響を与えない特例を設けています。
 このため、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症に変更されるまでに労働者が発病した場合の労災保険給付については、メリット制による労災保険料への影響はありませんが、5類感染症に変更された後に労働者が発病した場合の労災保険給付については、メリット制による労災保険料への影響がありえます。

参考リンク
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html 

2023年4月から現物給与の価額が改正されます
2023.03.16
労働保険およびの社会保険では、事業所から被保険者に支払われる給与の額をもとに保険料の額や一部の給付の額が決定されます。

この「支払われる給与」は、現金で支給されるもののみでなく、現物で支給されるものも含まれ、その現物を通貨に換算して現金に合算されて賃金や報酬として扱われます。そして、現物で支給されるものが、食事や住宅である場合は、厚生労働省が告示する「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」に定められた額に基づいて通貨に換算することになっています。

先日、2023年4月から適用される現物給与価額が公開されました。2022年4月からの現物給与の価額と比べて、一部の食事の価額が変更になっています。

以下よりリーフレットがダウンロードできますので、現物給与を支給している事業所は、その内容を確認しておくとよいでしょう。

↓日本年金機構「令和5年4月から現物給与の価額が改正されます」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150511.files/2023.pdf


2023年4月から始まる賃金のデジタル払いとその留意点について
2023.03.07
以前から取り上げてきたように、いよいよ2023年4月から賃金のデジタル払いが始まります。この賃金のデジタル払いは、給与を●●payなどで支払うことができるようになるものです。この件に関し、先日、厚生労働省より周知用のリーフレットが公開されました。

このリーフレットには、今後の賃金のデジタル払いに関する流れや、デジタル払いをする際の注意点、万が一の場合として、不正取引が起きたり、業者が破綻したりした場合の対応について記載されています。そのポイントは以下のとおりです。

1.デジタル払い開始までの流れ
・2023年4月
 資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請、厚生労働省で審査
・厚生労働大臣の指定後
 各事業場で賃金のデジタル払いに係る労使協定を締結
・労使協定締結後
 個々の労働者に説明し、労働者が同意した場合には賃金のデジタル払い開始

2.主な注意点
・現金化できないポイントや仮想通貨での賃金支払いは認められません
・現在の賃金支払い・受け取り方法の変更が必須となるわけではありません
・労働者が希望しない場合は、これまでどおりの方法での賃金の支払いとなります
・事業主は希望しない労働者に賃金のデジタル払いを強要することはできません

3.運用におけるポイント
・事前に労使協定を締結することが必要です
・賃金をデジタル払いで受け取る際の受取額は適切に設定をすること
・口座の上限額は100万円以下の設定となります
・デジタル払いで受け取った賃金を現金化することも可能です
 ※月1回は口座からの払い出し手数料なし
・口座残高の払い戻し期限は少なくとも10年間となります

4.万が一の場合の対応
・不正取引(心当たりのない出金など)が起きた場合
 口座所有者に過失がないときは損失額全額が補償されるが、労働者に過失があるときの保証については個別のケースによります。
 また、損失発生日から少なくとも30日以上の通知期間が設定されているので、不正取引があった場合には速やかに指定資金移動業者へ問い合わせてください。
・業者が破綻した場合
 指定資金移動業者が破綻したときには、保証機関から弁済が行われます。

  今後、賃金のデジタル払いを希望する従業員が出てくるかもしれません。実際にデジタル払いをするときには多くの留意点があることをあらかじめ確認しておきましょう。

  リーフレットのダウンロードはこちらから
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001065931.pdf

参考リンク
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html

障害者の法定雇用率 段階的な引上げが正式決定しました
2023.03.03
2023年度は障害者の法定雇用率の見直しのタイミングになります。厚生労働省の労働政策審議会で審議が行われていましたが、今回法令改正により段階的な引き上げが正式に決定しました。
この障害者の法定雇用率の引き上げも含め、以下が今後障害者雇用に関するポイントになります。

1.障害者の法定雇用率が段階的な引き上げ
民間企業の法定雇用率は、2024年4月から2.5%に、2026年7月2.7%になります。

2.除外率の引き下げ
除外率が、2025年4月1日から除外率設定業種ごとにそれぞれ10%引き下げられます。(現在除外率が10%以下の業種は除外率制度の対象外となります)

3.障害者雇用における障害者の算定方法の変更
・精神障害者の算定特例の延長(2023年4月)
週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1カウントとして算定できるようになります。
・一部の週所定労働時間20時間未満の障害者の雇用率への算定(2024年4月)
週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになります。

4.障害者雇用のための事業主支援が強化(助成金の新設・拡充)(2024年4月)
・雇入れやその雇用継続に関する相談支援、加齢に伴う課題に対応する助成金が新設されます
・既存の障害者雇用関係の助成金が拡充されます

厚生労働省からはすでにリーフレットが公開されています。
法定雇用率の引き上げ自体はまだ1年以上先ですが、今回の改正内容は早めに押さえておくとよいでしょう。

「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」のリーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf

2023年2月27日から1年単位変形労働時間制協定届の本社一括届出ができるようになりました
2023.02.28
一年単位の変形労働時間制に関する協定届は、事業場単位でそれぞれの所在地を管轄する労働基準監督署に届け出る必要がありますが、令和5年2月27日から、次の条件を満たす場合には、36協定届や就業規則届と同様に、本社において各事業場の協定届を一括して本社を管轄する労働基準監督署に届け出ることが可能となりました。

【本社一括届出が可能な要件】

■電子申請による届出であること

■以下の項目の記載内容が同一であること
▪対象期間及び特定期間(起算日)
▪対象期間中の各日及び各週の労働時間並びに所定休日
▪対象期間中の1週間の平均労働時間数
▪協定の有効期間
▪労働時間が最も長い日の労働時間数(満18歳未満の者)
▪労働時間が最も長い週の労働時間数(満18歳未満の者)
▪対象期間中の総労働日数
▪労働時間が48時間を超える週の最長連続週数
▪対象期間中の最も長い連続労働日数
▪対象期間中の労働時間が48時間を超える週数
▪特定期間中の最も長い連続労働日数
▪使用者の職名及び氏名
▪旧協定の内容

■ 事業場ごとに記載内容が異なる以下の項目については、厚生労働省HPまたはe-Govの申請ページからExcelファイル「一括届出事業場一覧作成ツール」をダウンロードし、内容を記入して添付すること

▪事業の種類
▪事業の名称
▪事業の所在地
▪常時使用する労働者
▪該当労働者数
▪協定当事者・協定成立年月日
▪管轄労働局
▪所轄労働基準監督署
参考リンク
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001063431.pdf

社会保険労務士法人 たじめ事務所 TEL.03-3511-0345(平日 10:00~18:00)アクセス