休日、休暇
2019.05.08
有給休暇の年5日取得が義務化!その概要は?
有給休暇のルールが変わる!
有給休暇の年5日取得が義務に

いわゆる働き方改革法案の一環として2019年4月より年次有給休暇の年5日取得が義務化されました。
事業主は法定の年次有給休暇の付与日数が10日以上となる全ての労働者(管理監督者や比例付与のパート・アルバイトも含みます)に対して、毎年年5日間、年次有給休暇を確実に取得させる必要が出てきました。

今までとどう違うのか?

今までは労働者が有給休暇を取得する旨を申し出ない限り、事業主は有給休暇を取得させなくても問題はありませんでした。
今後は労働者が事業主側に有給休暇取得の希望を出さないケースでも、事業主側が5日間の有給休暇を取得させなければいけなくなります。
年5日の有給休暇を取得させなかった場合は30万円以下の罰金が科される可能性があります。有給休暇を取得させなかった労働者1人につき1罰となりますので、仮に100人の従業員が有給休暇未取得だった場合最大で3000万円の罰金を支払うケースもあるかもしれません。

なぜ法改正?有給休暇の新ルールが新設された背景
法改正の理由は?

この法改正による新ルールが制定された背景には我が国における有給休暇取得率の低さがあります。厚生労働省が平成30年に発表した就労条件総合調査によると平成29年度の有給休暇取得率は51.1%にとどまっております。国が目標とする数値にはまだ遠く及ばないのが現状です。
現実的には「忙しくてなかなか取れない」、「有給休暇取得したいと言いづらい」等、様々な理由によって有給休暇は取得しづらいと感じている労働者は多く、有給休暇取得率の向上のために新しいルールが設けられたという事です。

法改正で労使双方にメリット

有給休暇を取得することで労働者は心身の疲労を回復させやすくなり、業務の効率の向上に寄与出来る可能性が高まるでしょう。今回の新ルールは労働者のみならず事業主にとってもメリットがあるのです。

今回の法改正の重要ポイントはココ!
ポイント①有給休暇付与日から1年以内に5日の有給休暇取得が義務

有給休暇付与日から1年以内に事業主は労働者1人毎に取得時季を指定した上で5日の年次有給休暇を取得させなければいけません。但し、有給休暇はあくまで労働者の自由意思で取得することが原則であるため、時季指定に当たり事業主が一方的に指定することはできず、「労働者側の意見を聴取」し、「出来る限り労働者の希望による取得時季になるように努める」必要があります。
対象者は年次有給休暇の付与日数が10日以上の全ての労働者です。管理監督者や期間の定めのある有期雇用労働者、パート・アルバイトも対象者となりますので、注意が必要です。尚、時期指定は、半日単位での取得も可能ですが、時間単位で行うことはできません。

ポイント②事業主からの時季指定を要しないケースは下記の通り 

労働者自らが既に5日以上の年次有給休暇を取得、または請求している場合は改めて事業主側から年次有給休暇の時季指定をする必要はありませんし、する事も出来ません。
また、労使協定で予め5日間の計画年休を定めている場合も時季指定を要しません。
「労働者自らの請求や取得」、「計画年休」の合計日数が年5日以上に達していない場合のみ事業主による時季指定が必要となります。
方法を問わず年休取得日数が年5日以上に達すれば問題はなく、例えば「労働者自らの請求や取得」、「計画年休」の合計日数が4日であれば、事業主からの有給休暇時季指定は1日のみで足ります。

ポイント③就業規則への記載義務

事業主による年次有給休暇の時季指定を実施する際には時季指定の対象となる労働者の範囲と時季指定の方法などを就業規則に予め記載しておく必要があります。
このルールに違反しますと30万円以下の罰金が科される可能性がありますので注意しましょう。
現在就業規則にこの時季指定に関する記載がない場合は就業規則の変更手続きが必要です。変更案を作成し、労働者の代表者からの意見を聴取した上で就業規則変更届を労働基準監督署へ提出してください。その後、労働者へ就業規則変更の旨を周知してください。

ポイント④年次有給休暇管理簿の作成、保存の義務

事業主は労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成して、3年間保存しなければいけません。当該の年休を与えた期間中および当該期間の満了後から3年間となります。なお、この管理簿は必要な際に出力できる仕組みとしていれば、システム上で管理をすることも可能です。

今回の年次有給休暇の法改正にどう対応するべきか?
労働者側から有給休暇取得の希望を出しやすくする

有給休暇は労働者側の希望に基づいて取得させるのが本来は望ましいので、有給休暇取得の希望が出しやすいように工夫をしていく必要があります。
例えば毎月、労働者に「有給休暇取得希望用紙」を配布し、希望を書いて貰うなど。口に出して言いづらいと感じている方も紙に記入する方法ならば希望を出しやすくなるかもしれません。
労働者から自発的に年5日以上有給休暇を取得してもらうことで、今回の法改正にも対応出来ます。

計画的付与(計画年休)を導入する

労使協定の締結が必要にはなりますが、5日を超える有給休暇が残っている労働者に対し、有給休暇を計画的に付与することができます。全社的、もしくは特定の部署や勤務形態単位でも導入が可能なので、有給休暇の取得率が低い場合は計画的付与を導入することで法改正に対応出来ます。但し、中には有給休暇が残っていない、もしくは付与されていない労働者もいると思いますので、基準日の設定や特別休暇にするのか否か等の制度設計が必要となります。

専門家に相談

現実的には有給休暇を積極的に取得させようとしますと、運営に支障を来す可能性もあると思います。特にギリギリの人員で運営をしている場合は有給休暇を取得させるのも大変なケースが多いのではないでしょうか。
今回の法改正に対応するために、従来の所定休日や特別休暇を有給休暇の消化日にするケースもあるようです。労働者の不利益になることはもちろん、行政解釈でも趣旨に沿わないとされており、何より労働者からの不信を生むこととなります。
労働者、事業主ともに負担のかからない方法での運用をしていくためには社会保険労務士に相談するのが一番かもしれません。
今後も年次有給休暇に関してさらなる法改正が行われる可能性もあります。あらゆる変化に対応するためには専門家と法改正の都度、対応をじっくりと協議していくのがベストでしょう。

参考
厚生労働省 働き方改革特設サイトhttps://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/salaried.html

厚生労働省 平成30年就労条件総合調査 
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html

田治米 洋平
特定社会保険労務士 (全国社会保険労務士会連合会 登録番号13060418)
1980年大阪生まれ。同志社大学文学部社会学科卒業。IT企業勤務を経て、2006年たじめ労働法務事務所を創業。2017年、社会保険労務士法人たじめ事務所へ組織変更、代表社員就任。
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