2024年度の最低賃金 全国加重平均額51円引上げで1055円の見込み
2024.09.02
都道府県別の2024年度最低賃金改定額が8月29日、出そろいました。27県の地方審議会は、全国一律で時給を50円引き上げるとした国審議会の目安額を上回り、徳島は84円で異例の引き上げ幅、20都道府県は目安と同じ50円増で決着しました。厚生労働省によると、全国平均の時給は51円増の1055円になります。
答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から11月1日までの間に順次発効される予定です。

目安への上乗せは前年度の24県を上回りました。隣接地域間や都市部との時給格差、それに伴う人材獲得競争が背景にあります。物価高に苦しむ労働者の処遇改善につながる一方で、企業側にとっては人件費の負担が重くなるでしょう。

厚生労働省がまとめた地方最低賃金審議会の答申のポイントは次の通りです。
・47都道府県で、50円~84円の引上げ(引上げ額が84円は1県、59円は2県、58円は1県、57円は1県、56円は3県、55円は7県、54円は3県、53円は1県、52円は2県、51円は6県、50円は20都道府県)
・改定額の全国加重平均額は1,055円(昨年度1,004円)
・全国加重平均額51円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
・最高額(1,163円)に対する最低額(951円)の比率は、81.8%(昨年度は80.2%。なお、この比率は10年連続の改善)

参考リンク
厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42150.html


労働者死傷病報告の報告事項が改正 来年から電子申請が義務化されます
2024.08.26
労働者が労働災害等により死亡し、又は休業したときには、事業者は所轄の労働基準監督署に労働者死傷病報告を提出しなければなりません(労働安全衛生規則第97条)。
2025年1月1日から、労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます。
(※ 経過措置として、当面の間、電子申請が困難な場合は書面による報告が可能です。)

先日、厚労省が電子化になった際の報告事項を確認できるリーフレットを公開しました。
電子申請に当たっては、厚生労働省ポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」が活用できるとのことです。

参考リンク
厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/denshishinsei_00002.html


PayPayで賃金払い可能に 初の事業者指定 厚労省
2024.08.15
厚生労働省は9日、賃金のデジタルマネー払いに使うスマートフォン決済アプリの事業者として「PayPay(ペイペイ)」の運営会社を指定しました。デジタル払いの制度は昨年4月に解禁されましたが、事業者が指定されるのは初めてとなります。
今後は労使協定を結べば、ペイペイで賃金の支払いと受け取りが可能になります。

ペイペイの運営会社を含むソフトバンクグループ10社は同日、従業員が希望すれば、9月分の賃金からペイペイで支払うと発表しました。従業員が受け取り金額を最大20万円まで指定できます。各社は「受け取り方法の選択肢を増やすとともに、グループ全体でペイペイ経済圏の拡大を推進していく」としています。

賃金のデジタル払いについては、成長戦略としてキャッシュレス決済の普及を掲げる政府方針などに基づき導入が進められ、昨年4月の改正省令施行で解禁されました。賃金の支払先となる決済アプリの口座残高は上限100万円。労働者はアプリでそのまま買い物や送金ができます。

厚労省によると、指定申請した4社について、仮に経営破綻しても入金された賃金の残高分を担保できるかどうかなど1年以上かけて検証を行い、ペイペイの指定を決めました。 厚労省の担当者は「指定要件を満たすことを確認した。有効活用してもらいたい」と話しました。他3社については審査中としています。

一方で、賃金を支払う企業はデジタル払いの導入にあたり、労働者の同意を得ることなども必要で、実際の利用がどこまで広がるかが焦点となっています。


2024年度地域別最低賃金額改定 目安は全国一律「50円」の引き上げ
2024.08.01
改定の行方が注目される地域別最低賃金について、2024年度も大幅な引き上げが見込まれることが分かりました。

厚生労働省の特設サイトなどによると、最低賃金は、最低賃金審議会で、賃金の実態調査結果などを参考にしながら審議され、①労働者の生計費、②労働者の賃金、③通常の事業の賃金支払能力を考慮して毎年、改定されています。
最低賃金には、産業に関わりなく地域内のすべての労働者に適用される「地域別最低賃金」と、特定の産業に働く労働者に適用される「特定最低賃金」の2種類があります。
1978年度から地域別最低賃金の整合性を図るため、中央最低賃金審議会が毎年、地域別最低賃金額改定の「目安」を作り、地方最低賃金審議会へ提示しています。

2024年度(令和6年度)の地域別最低賃金額改定の目安については、正式に中央最低賃金審議会から厚生労働大臣に対して答申が行われ、ランクに関係なく、全国一律で50円とされれました。消費者物価の上昇などを重視した結果だといいます。
もし目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,054円となります。この場合、全国加重平均の上昇額は50円(昨年度は43円)となり、1978度に目安制度が始まって以降で最高額となります。また、引上げ率に換算すると5.0%(昨年度は4.5%)となります。

これまで政府が目標としてきた「全国加重平均で時給1,000円以上の達成」はすでに2023年度に達成されましたが、都道府県ごとで見ると、依然として1,000円を下回るところも少なくありません。賃金額の地域間格差は、地方部から都市部へ労働力流出、地方の中小企業・小規模事業者の事業継続・発展の困難に拍車をかける一因となることから、地方における最低賃金の底上げは引き続き課題となりそうです。

参考リンク
中央最低賃金審議会「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41785.html


連合 労災保険の団体設立 フリーランスの補償を支援
2024.07.22
労働団体の連合が、企業に属さないフリーランス(個人事業主)を対象とした、労災保険への加入申請や給付申請を支援する団体を設立すると発表しました。

厚生労働省によると、フリーランスで働く人は国内で462万人いるとされていますが、原則、業務でけがや病気になった時に労災保険による補償を受けられません。
このため国は、11月からフリーランスが自己負担で労災保険に加入できる「特別加入制度」の対象業種を拡大する予定です。
こうした動きを受け、労働団体の連合はフリーランスの特別加入を支援する団体を新たに設立することを明らかにしました。
連合によると、団体名は「連合フリーランス労災保険センター」。19日の中央執行委員会で承認され、設立は8月。会費は月600円を予定しています。
加入申請の手続きや、事故が発生した時の労災給付申請の支援、加入者に対する相談や教育などを行うことになります。

連合の芳野友子会長は「曖昧な雇用で働く人たちのセーフティーネットの強化になる。ゆくゆくは安全に健康的に働けるようにし、組織拡大も視野に入れている」と話しました。


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