「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに 関する事例集」が一部改正されました
2023.06.30
社会保険では、会社が従業員に労働の対償として支払うものは、報酬や賞与として社会保険料の対象となるとしています。今回、長期で勤続した従業員に対して、表彰金等を支払う場合の、報酬等に該当するか否か、その取扱いが「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに 関する事例集」に追記されることにより明確化されました。

【問】事業主が長期勤続者に対して支給する金銭、金券又は記念品等(以下「永年勤続表彰金」という。)は、「報酬等」に含まれるか。

【答】永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断するのではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない。
ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、事業所に対し、当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること。

≪永年勤続表彰金における判断要件≫
① 表彰の目的
 企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
② 表彰の基準
 勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
③ 支給の形態
 社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

労働力人口の不足が深刻化する中、長期勤務の功績や貢献度を称賛し、また促進したいと考える企業は多くあるかと思います。制度の設計をするときには、このような社会保険の面も考慮しておく必要があるのでしょう。
なお、労働保険は「年功慰労金」、「勤続褒賞金」は賃金としないものとして示されており、所得税は、参考リンクにある国税庁のホームページで示されているため、あわせて確認しておくとよいでしょう。

参考リンク
厚生労働省「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について(令和5年6月27日事務連絡)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230629T0010.pdf 
厚生労働省「労働保険対象賃金の範囲」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/dl/1-3-2.pdf  
国税庁「No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」 
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2591.htm 


【重要】弊所使用システム「社労夢」の接続障害について
2023.06.14
弊所が契約する株式会社エムケイシステムに関して、同社サーバーが第三者からの不正アクセスによりランサムウェアに感染し、 利用する業務システム「社労夢」が起動せず、電子申請手続業務、給与計算業務ができない状態が続いています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF134VE0T10C23A6000000/

●個人情報漏洩の恐れ
社労夢および社労夢に関連するソフトウェアには、社会保険・雇用保険・労災保険等に関する企業情報および個人情報、給与・賞与等の賃金支給額および関連する個人情報、並びにマイナンバーなどが登録されております。これについて、株式会社エムケイシステムからは、次の説明を受けております。
・当社サービスを提供しているデータセンター上のサーバーからランサムウェアによる第三者からの不正アクセスを受けた。
・感染確認後、直ちに外部専門家を交え原因の特定、被害情報の確認、情報流出の有無などの調査に着手すると共に、システムの早期復旧に向け全力で取り組んでいる。
・現時点で、個人情報の流出の事実は確認していないが、流出の恐れの可能性を重視し、6月8日15時に個人情報保護委員会へ報告を完了している。
 ※直近の報告(第22報 6/13 19:30時点)では、漏えいに関する報告はない。


●弊所の現在の対応

弊所は、個人情報取扱事業者に該当することから、個人情報保護法第26条1項及び個人情報施行規則第8条に拠り、個人情報保護委員会への報告を6月14日に行いました。

「社労夢」の復旧目途はいまだ示されておらず、現在、社会保険手続きにおいては、離職票を要する離職者の手続き、健康保険証を要する資格取得者の手続きを、e-Govもしくは別ソフト(オフィスステーション)を使用し、優先して行っています。

給与計算においては、6/4時点のバックアップデータから復旧した簡易版の代替ソフトウェアが提供されておりますが、動作が非常に重く、マスタの変更もできない状況です。そのため、一部企業様においては別ソフト(マネーフォワードクラウド給与)にて対応させていただいております。

大変ご迷惑をお掛けしますが、弊所では出来る限りのご対応をいたしますので、ご理解いただけますと幸いです。

令和5年6月14日
社会保険労務士法人たじめ事務所
代表社員 田治米 洋平
外国人の「特定技能2号」11分野へ対象拡大を閣議決定しました
2023.06.12
政府は9日、熟練外国人労働者として永住可能な在留資格「特定技能2号」の受け入れ対象を、現在の2分野から11分野に拡大する運用方針を閣議決定しました。今は建設と造船・舶用工業の2分野が対象でしたが、農業や漁業、宿泊など9分野を追加します。

特定技能制度は、人手不足が進む中、即戦力の外国人労働者を受け入れる目的で2019年に4月にスタートしました。在留期間が通算5年の「1号」と、在留期間の更新回数に上限がない「2号」があります。1号は相当程度の知識・経験、2号はより熟練した技能が求められます。また、2号は配偶者と子どもの帯同が認められ、条件を満たせば永住もできます。いずれも試験などで技能水準を確認することになります。

追加する9分野は、現在1号のみ受け入れており、2号として雇用を続けたいとの要望が各産業分野から寄せられていました。制度創設時は永住も可能となる2号を幅広い分野で受け入れることに慎重な意見が多く、対象は2分野にとどまっていました。
取扱いについては、省令改正などを経て、その施行をもって開始することになります。家族帯同も可能で、永住への道も開ける特定技能2号の対象拡大は、企業側にとっても、外国人労働者にとっても外国人労働者定着の大きな一歩になりそうです。

日本年金機構が今年の算定基礎届の情報を公開しました
2023.05.24
社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、標準報酬月額が、実際の報酬(給与)と大きくかけ離れないように、年に1回、定時決定として4月から6月に被保険者に支給された報酬(給与)を日本年金機構に届け出ることになっています。このときの様式が「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届」であり、通常、この業務を「算定基礎」と呼んでいます。
今年も算定基礎届の提出時期が近づいたことから、日本年金機構が算定基礎届の情報を更新しました。

案内では、これまでコロナ禍で見送りされていた会場での算定基礎届事務講習会が実施されることになっており、また、算定基礎届の記入にかかる基本的な事項から具体的事例、提出方法等についての説明動画が公開されています。
「算定基礎届の記入・提出ガイドブック」も令和5年度に更新されています。

実際の処理は、6月の給与が支給された後からになりますが、1年に1回の処理になるため、早めに動画やガイドブックで内容を確認しておくとよいでしょう。

参考リンク
日本年金機構「【事業主の皆さまへ】令和5年度の算定基礎届のご提出について」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2023/202305/0519.html 
令和5年度算定基礎届事務説明【動画】
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/santeisetsumei.html
算定基礎届の記入・提出ガイドブック 令和5年度
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/santei.guide.book.pdf


2023年4月より雇用保険の特定理由離職者の範囲が拡大されました
2023.05.15
会社を退職した雇用保険の被保険者のうち、一定の条件を満たした人は、雇用保険から基本手当を中心とした求職者給付が支給されます。この求職者給付を受給する際には、その退職者の離職理由によって支給開始までの期間や支給される金額が変わることがあります。今回、2023年4月1日以降に退職した人について、特定理由離職者の範囲に以下の項目が追加されました。

追加された項目は、配偶者から身体に対する暴力またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を受け、加害配偶者との同居を避けるため住所又は居所を移転したことにより離職した人です。
配偶者には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます。

対象となるには、裁判所が発行する配偶者暴力防止法第10条に基づく保護命令に係る書類の写しまたは婦人相談所等が発行する配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書の発行が確認できることが必要です。
また、住所または居所を移転したことの確認は、住民票(住民票記載事項証明書)や運転免許証、マイナンバーカード、その他(転居前、転居後の住所と転居した日がわかる書類)の書類の提出することになります。

東京労働局のホームページには、ハローワークに提出する「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」も掲載されています。万が一の事態に備えて確認しておくとよいでしょう。

参考リンク
東京労働局「配偶者から暴力を受け、加害配偶者との同居を避けるため転居したことにより離職された方の取扱いについてお知らせします。」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_00999.html

社会保険労務士法人 たじめ事務所 TEL.03-3511-0345(平日 10:00~18:00)アクセス