名古屋自動車学校事件 最高裁判決が公開されました
2023.08.03
定年後に再雇用された際、基本給などの賃金が大幅に減額されたのは不合理な待遇格差だとして、自動車学校に勤めていた嘱託職員2人が定年前との差額分の支給などを学校側に求めた訴訟の上告審判決分が裁判所サイトで公開されました。

本事件は、一審、二審のいずれも、「基本給が定年前の6割を下回るのは不合理な待遇格差である」と判断する中、最高裁がどのような判断を下すかが注目されていました。

このような経過を辿る中、最高裁は、「基本給及び賞与に関する待遇差に関し、原審(第二審)の判断は労働契約法20条の解釈を誤った違法がある」として破棄した上、本件の審理を原審である名古屋高等裁判所に差し戻すという判断を下しました。

原審では、各基本給、賞与・嘱託職員一時金の性質やこれを支給することとされた目的を十分に踏まえておらず、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮していないなどというものです。

定年後の再雇用(嘱託社員)を検討する企業は決して少なくありません。今後の動向に注目です。

詳細は以下、ご覧ください。

令和4年(受)第1293号 地位確認等請求事件 令和5年7月20日 第一小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/208/092208_hanrei.pdf


令和5年度の最低賃金引上げ目安は39~41円 全国平均時給1002円に 過去最大幅
2023.07.31
 厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は28日午後、2023年度の最低賃金を全国平均で時給1002円に引き上げる目安をまとめました。物価高騰を背景に、現在の961円から41円の増額で、02年度に現行方式となってから最大の増加幅となります。
 最低賃金は全ての労働者に適用される賃金の下限額。今後は、この目安額を参考にしながら、地方最低賃金審議会での地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により各都道府県の地域別最低賃金が決定され、10月ごろから適用されます。

 目安額は昨年度まで、経済状況に応じて都道府県をA-Dの4区分に分け、区分ごとに示していました。23年度からは地域間格差の是正を目的にA-Cの3区分に再編し、今回、Aランクで41円、Bランクで40円、Cランクで39円をそれぞれ引き上げるよう求めました。

 これまでの小委員会で労働者側は大幅引き上げを主張するとともに、最低賃金が最も低い時給853円の10県は47円増の900円にするよう要求していました。経営者側は賃上げの必要性には理解を示しましたが「中小企業が置かれている厳しい経営状況を踏まえるべきだ」と訴えていました。
 最低賃金の引き上げ率は20年度を除き、近年は前年度比で3%程度の上昇でした。政府は6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で「今年は時給千円を達成することを含め議論を行う」とされていましたが、その達成は確実となり、次は1,000円達成後の引き上げの方向性についての議論が進められることとなります。

「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに 関する事例集」が一部改正されました
2023.06.30
社会保険では、会社が従業員に労働の対償として支払うものは、報酬や賞与として社会保険料の対象となるとしています。今回、長期で勤続した従業員に対して、表彰金等を支払う場合の、報酬等に該当するか否か、その取扱いが「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに 関する事例集」に追記されることにより明確化されました。

【問】事業主が長期勤続者に対して支給する金銭、金券又は記念品等(以下「永年勤続表彰金」という。)は、「報酬等」に含まれるか。

【答】永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断するのではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない。
ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、事業所に対し、当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること。

≪永年勤続表彰金における判断要件≫
① 表彰の目的
 企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
② 表彰の基準
 勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
③ 支給の形態
 社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

労働力人口の不足が深刻化する中、長期勤務の功績や貢献度を称賛し、また促進したいと考える企業は多くあるかと思います。制度の設計をするときには、このような社会保険の面も考慮しておく必要があるのでしょう。
なお、労働保険は「年功慰労金」、「勤続褒賞金」は賃金としないものとして示されており、所得税は、参考リンクにある国税庁のホームページで示されているため、あわせて確認しておくとよいでしょう。

参考リンク
厚生労働省「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について(令和5年6月27日事務連絡)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230629T0010.pdf 
厚生労働省「労働保険対象賃金の範囲」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/dl/1-3-2.pdf  
国税庁「No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」 
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2591.htm 


【重要】弊所使用システム「社労夢」の接続障害について
2023.06.14
弊所が契約する株式会社エムケイシステムに関して、同社サーバーが第三者からの不正アクセスによりランサムウェアに感染し、 利用する業務システム「社労夢」が起動せず、電子申請手続業務、給与計算業務ができない状態が続いています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF134VE0T10C23A6000000/

●個人情報漏洩の恐れ
社労夢および社労夢に関連するソフトウェアには、社会保険・雇用保険・労災保険等に関する企業情報および個人情報、給与・賞与等の賃金支給額および関連する個人情報、並びにマイナンバーなどが登録されております。これについて、株式会社エムケイシステムからは、次の説明を受けております。
・当社サービスを提供しているデータセンター上のサーバーからランサムウェアによる第三者からの不正アクセスを受けた。
・感染確認後、直ちに外部専門家を交え原因の特定、被害情報の確認、情報流出の有無などの調査に着手すると共に、システムの早期復旧に向け全力で取り組んでいる。
・現時点で、個人情報の流出の事実は確認していないが、流出の恐れの可能性を重視し、6月8日15時に個人情報保護委員会へ報告を完了している。
 ※直近の報告(第22報 6/13 19:30時点)では、漏えいに関する報告はない。


●弊所の現在の対応

弊所は、個人情報取扱事業者に該当することから、個人情報保護法第26条1項及び個人情報施行規則第8条に拠り、個人情報保護委員会への報告を6月14日に行いました。

「社労夢」の復旧目途はいまだ示されておらず、現在、社会保険手続きにおいては、離職票を要する離職者の手続き、健康保険証を要する資格取得者の手続きを、e-Govもしくは別ソフト(オフィスステーション)を使用し、優先して行っています。

給与計算においては、6/4時点のバックアップデータから復旧した簡易版の代替ソフトウェアが提供されておりますが、動作が非常に重く、マスタの変更もできない状況です。そのため、一部企業様においては別ソフト(マネーフォワードクラウド給与)にて対応させていただいております。

大変ご迷惑をお掛けしますが、弊所では出来る限りのご対応をいたしますので、ご理解いただけますと幸いです。

令和5年6月14日
社会保険労務士法人たじめ事務所
代表社員 田治米 洋平
外国人の「特定技能2号」11分野へ対象拡大を閣議決定しました
2023.06.12
政府は9日、熟練外国人労働者として永住可能な在留資格「特定技能2号」の受け入れ対象を、現在の2分野から11分野に拡大する運用方針を閣議決定しました。今は建設と造船・舶用工業の2分野が対象でしたが、農業や漁業、宿泊など9分野を追加します。

特定技能制度は、人手不足が進む中、即戦力の外国人労働者を受け入れる目的で2019年に4月にスタートしました。在留期間が通算5年の「1号」と、在留期間の更新回数に上限がない「2号」があります。1号は相当程度の知識・経験、2号はより熟練した技能が求められます。また、2号は配偶者と子どもの帯同が認められ、条件を満たせば永住もできます。いずれも試験などで技能水準を確認することになります。

追加する9分野は、現在1号のみ受け入れており、2号として雇用を続けたいとの要望が各産業分野から寄せられていました。制度創設時は永住も可能となる2号を幅広い分野で受け入れることに慎重な意見が多く、対象は2分野にとどまっていました。
取扱いについては、省令改正などを経て、その施行をもって開始することになります。家族帯同も可能で、永住への道も開ける特定技能2号の対象拡大は、企業側にとっても、外国人労働者にとっても外国人労働者定着の大きな一歩になりそうです。

社会保険労務士法人 たじめ事務所 TEL.03-3511-0345(平日 10:00~18:00)アクセス