厚労省から「年収の壁・支援強化パッケージ」が公開されました
2023.09.29
2023年9月25日の記事でお伝えした「年収の壁」について、9月27日に厚生労働省から「年収の壁・支援強化パッケージ」として、対応策が公開されました。 具体的な内容は次の通りです。

(1)106万円の壁への対応
①キャリアアップ助成金のコースの新設
・キャリアアップ助成金を拡充し、短時間労働者が新たに被用者保険の適用となる際に、労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対して、複数年(最大3年)で計画的に取り組むケースを含め、一定期間助成(労働者1人当たり最大50万円)を行うこととする。
・助成対象となる労働者の収入を増加させる取組には、賃上げや所定労働時間の延長のほか、被用者保険の保険料負担に伴う労働者の手取り収入の減少分に相当する手当(社会保険適用促進手当)の支給も含めることとする。また、支給申請に当たって、提出書類の簡素化など事務負担を軽減する。
②社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
・被用者保険が適用されていなかった労働者が新たに適用となった場合に、事業主は、当該労働者に対し、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給することができることとする。
※当該手当などにより標準報酬月額・標準賞与額の一定割合を追加支給した場合、キャリアアップ助成金の対象となり得る。
・社会保険適用促進手当については、被用者保険適用に伴う労働者本人負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、当該労働者の標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととする。
※同一事業所内において同条件で働く他の労働者にも同水準の手当を特例的に支給する場合には、社会保険適用促進手当に準じるものとして、同様の取扱いとする。

(2)130万円の壁への対応
③事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
・被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認することとしているところ、一時的な収入の増加がある場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な認定を可能とする。

(3)配偶者手当への対応
④企業の配偶者手当の見直し促進
・令和6年春の賃金見直しに向けた労使の話合いの中で配偶者手当の見直しも議論され、中小企業においても配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい資料を作成・公表する。
・収入要件のある配偶者手当が就業調整の一因となっていること、配偶者手当を支給している企業が減少の傾向にあること等を各地域で開催するセミナーで説明するとともに、中小企業団体等を通じて周知する。

各対応策については、本パッケージに基づき、今後、所要の手続を経た上で、関係者と連携し、着実に進めていくこととしています。

参考リンク:
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_2023_00002.html
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html


「年収の壁」130万円超でも2年まで扶養可能に 10月から
2023.09.25
パート労働者らの年収が一定額を超えると社会保険料の負担で手取りが減る「年収の壁」問題を巡り、厚生労働省は年収130万円を超えても連続2年までなら扶養にとどまれるようにする方針を固めました。2023年10月から実施する考えです。

パート労働者らの年収が130万円を超えると、配偶者による扶養の対象から外れ社会保険料を負担する必要があり、「130万円の壁」と呼ばれています。このため手取りの減少を避けようと、働く時間を調整するケースが多く、職場の人手不足の要因ともされています。

そこで厚労省は、一時的な増収で年収が130万円を超えても、雇用主が一時的な収入増だと証明することで、健康保険組合など保険者が個別に判断する仕組みを取り入れ、扶養にとどまれるようにする方針です。手続きのための書類作成も簡素にし、雇用主らの負担軽減につなげる考えです。

また、一定の条件下で社会保険料の納付が必要になる「106万円の壁」の解消に向けては、企業を対象にした助成制度を創設し、手取りが減らないよう労働時間の延長や賃上げに取り組む企業に対し1人当たり最大50万円を助成する方針です。

ただ、これらの対策は2025年の次期年金制度改革までの一時的な措置です。厚労省は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会で制度の抜本的な見直しに向けた議論を今月から開始しており、2024年末までに案をまとめる予定です。


令和5年度の地域別最低賃金 全都道府県公示されました
2023.09.15
最低賃金が改定されます。
最低賃金額については、答申から変更はありませんでしたが、発効月日について石川県が10月4日から10月8日に後ろ倒しになっています。
最終的な都道府県の令和5年度地域別最低賃金額及び発効年月日は、表でご確認ください。

参考リンク:
厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html

2023年9月1日付けで心理的負荷による精神障害の労災認定基準が改正されました
2023.09.04
厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、2023年9月1日付で厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。

この改正は、近年の社会情勢の変化等に鑑み、最新の医学的知見を踏まえて「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行い、今年7月に報告書が取りまとめられたことを受けたものです。
ポイントは次の通りです。

①業務による心理的負荷評価表の見直し
・具体的出来事「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)を追加
・具体的出来事「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を追加
・心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充(パワーハラスメントの6類型すべての具体例の明記等)

②精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
・悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認める

③医学意見の収集方法を効率化
・専門医3名の合議により決定していた事案について、特に困難なものを除き1名の意見で決定できるよう変更

この改正により、実際に発生した業務による出来事を、業務による心理的負荷評価表の「具体的出来事」に当てはめ負荷(ストレス)の強さを評価するという要素が強くなります。実務においては、こうした負荷が精神障害の原因になるリスクが高いという認識に基づき、職場環境の整備を行っていきましょう。

参考リンク
厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34888.html 



令和5年度の最低賃金 全国加重平均額43円引上げで1004円の見込みとなります
2023.08.22
厚生労働省は18日、全国の都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した令和5年度の地域別最低賃金の改定額(以下「改定額」)を取りまとめ、改定額と発効予定年月日を公表しました。

その結果、答申での全国加重平均額は、審議会の目安を上回り、昨年度から43円引上げの全国加重平均1,004円が示されました。物価高に加え、人手不足に伴う隣接県との人材獲得競争が押し上げの背景にあり、佐賀は目安額に8円上乗せしました。8円は現行方式となった02年度以降で最大です。答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。

厚生労働省がまとめた地方最低賃金審議会の答申のポイントは以下の通りです。

・47都道府県で、39円~47円の引上げ
(引上げ額が47円は2県、46円は2県、45円は4県、44円は5県、43円は2県、42円は4県、41円は10都府県、40円は17道府県、39円は1県)
・改定額の全国加重平均額は1,004円(昨年度961円)
・全国加重平均額43円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
・最高額(1,113円)に対する最低額(893円)の比率は、80.2%(昨年度は79.6%。なお、この比率は9年連続の改善)

最低賃金の引き上げにより、配偶者に扶養されるパートらが、社会保険料の発生する「年収の壁」を超えないよう、就労時間を抑える可能性があり、政府は10月から、手取り収入の減少分を穴埋めした企業を支援する制度を導入する方針です。

参考リンク
都道府県別の「令和5年度 地域別最低賃金 答申状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001136128.pdf
厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34684.html


社会保険労務士法人 たじめ事務所 TEL.03-3511-0345(平日 10:00~18:00)アクセス