雇用保険「週10時間以上勤務」も加入へ 500万人対象
2023.11.24
厚生労働省は22日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会を開き、パートら短時間労働者の雇用保険への加入を拡大する制度改正案に関し、保険料率や失業時などの給付を現在の加入者と同水準とする方針を示しました。2024年の通常国会に関連法案を提出し、28年度にも開始を目指しています。

厚労省は、雇用保険の加入要件である週の労働時間を現行の「20時間以上」から「10時間以上」へと引き下げる方向で検討しています。新たに約500万人が加入する見込みです。失業や育児休業に伴う給付を受け取れるようにすることによって、雇用のセーフティーネットを強化して収入を安定させ、安心して出産や子育てができる環境をつくる狙いです。

雇用保険に加入すると、労働者と企業の合計で賃金の1・55%を保険料として支払います。このうち労働者が0・6%を負担しています。加入により、職を失った際の失業給付や、育休取得時に休業前の手取り収入額の実質8割を受給できる育休給付などの対象となります。失業給付の基本手当は日額で29歳以下が6945円、60~64歳は7294円が上限です。育休給付に関しては、両親が共に育休を取った場合、手取り収入額の実質10割に引き上げる方針です。

部会では、加入した場合の料率や給付を現在の加入者と同水準とする方針が示され、大きな異論は出ませんでした。給付の対象となる「失業」の状態に当てはまるかどうかの基準は、現在の加入者である正社員などを念頭に設定されているため、今後見直しを検討することになります。


厚生労働省 10月30日から年収の壁突破・総合相談窓口を開設します
2023.10.30
年収の壁・支援強化パッケージでは、複数の対策が盛り込まれており、対応に苦慮されている方も多いのではないかと思います。

厚生労働省では本日(2023年10月30日)から、年収の壁突破・総合相談窓口を設置し、フリーダイヤルでの相談対応を開始します。
最終的にどのような制度にするかは様々だと思いますが、こうした相談窓口を活用しながら、慎重に対応を進めるとよいでしょう。

参考リンク
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html



2024年4月から労働条件明示のルールが改正されます
2023.10.16
2024年4月から、「労働基準法施行規則」及び「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正に伴い、従業員を雇い入れる際等に行う労働条件明示のルールが変更されます。
先日、厚生労働省から実務上確認しておきたい行政通達、Q&A、パンフレットが公開されました。それぞれの内容についての説明に加え、記載例も明示されています。

変更になる大きな項目としては、以下の3点です。
1.就業場所・業務の変更の範囲
2.更新上限の有無と内容(有期契約労働者)
3.無期転換申込機会及び無期転換後の労働条件(有期契約労働者)

施行まで残り半年程度となりましたので、労働条件の明示事項やそのタイミングについて、早めに確認しておくとおいでしょう。

[通達]
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156120.pdf
[Q&A]
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156119.pdf
[パンフレット]
https://roumu.com/pdf/2023101311.pdf

参考リンク
厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html


厚労省から「年収の壁・支援強化パッケージ」が公開されました
2023.09.29
2023年9月25日の記事でお伝えした「年収の壁」について、9月27日に厚生労働省から「年収の壁・支援強化パッケージ」として、対応策が公開されました。 具体的な内容は次の通りです。

(1)106万円の壁への対応
①キャリアアップ助成金のコースの新設
・キャリアアップ助成金を拡充し、短時間労働者が新たに被用者保険の適用となる際に、労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対して、複数年(最大3年)で計画的に取り組むケースを含め、一定期間助成(労働者1人当たり最大50万円)を行うこととする。
・助成対象となる労働者の収入を増加させる取組には、賃上げや所定労働時間の延長のほか、被用者保険の保険料負担に伴う労働者の手取り収入の減少分に相当する手当(社会保険適用促進手当)の支給も含めることとする。また、支給申請に当たって、提出書類の簡素化など事務負担を軽減する。
②社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
・被用者保険が適用されていなかった労働者が新たに適用となった場合に、事業主は、当該労働者に対し、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給することができることとする。
※当該手当などにより標準報酬月額・標準賞与額の一定割合を追加支給した場合、キャリアアップ助成金の対象となり得る。
・社会保険適用促進手当については、被用者保険適用に伴う労働者本人負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、当該労働者の標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととする。
※同一事業所内において同条件で働く他の労働者にも同水準の手当を特例的に支給する場合には、社会保険適用促進手当に準じるものとして、同様の取扱いとする。

(2)130万円の壁への対応
③事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
・被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認することとしているところ、一時的な収入の増加がある場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な認定を可能とする。

(3)配偶者手当への対応
④企業の配偶者手当の見直し促進
・令和6年春の賃金見直しに向けた労使の話合いの中で配偶者手当の見直しも議論され、中小企業においても配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい資料を作成・公表する。
・収入要件のある配偶者手当が就業調整の一因となっていること、配偶者手当を支給している企業が減少の傾向にあること等を各地域で開催するセミナーで説明するとともに、中小企業団体等を通じて周知する。

各対応策については、本パッケージに基づき、今後、所要の手続を経た上で、関係者と連携し、着実に進めていくこととしています。

参考リンク:
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_2023_00002.html
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html


「年収の壁」130万円超でも2年まで扶養可能に 10月から
2023.09.25
パート労働者らの年収が一定額を超えると社会保険料の負担で手取りが減る「年収の壁」問題を巡り、厚生労働省は年収130万円を超えても連続2年までなら扶養にとどまれるようにする方針を固めました。2023年10月から実施する考えです。

パート労働者らの年収が130万円を超えると、配偶者による扶養の対象から外れ社会保険料を負担する必要があり、「130万円の壁」と呼ばれています。このため手取りの減少を避けようと、働く時間を調整するケースが多く、職場の人手不足の要因ともされています。

そこで厚労省は、一時的な増収で年収が130万円を超えても、雇用主が一時的な収入増だと証明することで、健康保険組合など保険者が個別に判断する仕組みを取り入れ、扶養にとどまれるようにする方針です。手続きのための書類作成も簡素にし、雇用主らの負担軽減につなげる考えです。

また、一定の条件下で社会保険料の納付が必要になる「106万円の壁」の解消に向けては、企業を対象にした助成制度を創設し、手取りが減らないよう労働時間の延長や賃上げに取り組む企業に対し1人当たり最大50万円を助成する方針です。

ただ、これらの対策は2025年の次期年金制度改革までの一時的な措置です。厚労省は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会で制度の抜本的な見直しに向けた議論を今月から開始しており、2024年末までに案をまとめる予定です。


社会保険労務士法人 たじめ事務所 TEL.03-3511-0345(平日 10:00~18:00)アクセス