PayPayで賃金払い可能に 初の事業者指定 厚労省
2024.08.15
厚生労働省は9日、賃金のデジタルマネー払いに使うスマートフォン決済アプリの事業者として「PayPay(ペイペイ)」の運営会社を指定しました。デジタル払いの制度は昨年4月に解禁されましたが、事業者が指定されるのは初めてとなります。
今後は労使協定を結べば、ペイペイで賃金の支払いと受け取りが可能になります。

ペイペイの運営会社を含むソフトバンクグループ10社は同日、従業員が希望すれば、9月分の賃金からペイペイで支払うと発表しました。従業員が受け取り金額を最大20万円まで指定できます。各社は「受け取り方法の選択肢を増やすとともに、グループ全体でペイペイ経済圏の拡大を推進していく」としています。

賃金のデジタル払いについては、成長戦略としてキャッシュレス決済の普及を掲げる政府方針などに基づき導入が進められ、昨年4月の改正省令施行で解禁されました。賃金の支払先となる決済アプリの口座残高は上限100万円。労働者はアプリでそのまま買い物や送金ができます。

厚労省によると、指定申請した4社について、仮に経営破綻しても入金された賃金の残高分を担保できるかどうかなど1年以上かけて検証を行い、ペイペイの指定を決めました。 厚労省の担当者は「指定要件を満たすことを確認した。有効活用してもらいたい」と話しました。他3社については審査中としています。

一方で、賃金を支払う企業はデジタル払いの導入にあたり、労働者の同意を得ることなども必要で、実際の利用がどこまで広がるかが焦点となっています。


2024年度地域別最低賃金額改定 目安は全国一律「50円」の引き上げ
2024.08.01
改定の行方が注目される地域別最低賃金について、2024年度も大幅な引き上げが見込まれることが分かりました。

厚生労働省の特設サイトなどによると、最低賃金は、最低賃金審議会で、賃金の実態調査結果などを参考にしながら審議され、①労働者の生計費、②労働者の賃金、③通常の事業の賃金支払能力を考慮して毎年、改定されています。
最低賃金には、産業に関わりなく地域内のすべての労働者に適用される「地域別最低賃金」と、特定の産業に働く労働者に適用される「特定最低賃金」の2種類があります。
1978年度から地域別最低賃金の整合性を図るため、中央最低賃金審議会が毎年、地域別最低賃金額改定の「目安」を作り、地方最低賃金審議会へ提示しています。

2024年度(令和6年度)の地域別最低賃金額改定の目安については、正式に中央最低賃金審議会から厚生労働大臣に対して答申が行われ、ランクに関係なく、全国一律で50円とされれました。消費者物価の上昇などを重視した結果だといいます。
もし目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,054円となります。この場合、全国加重平均の上昇額は50円(昨年度は43円)となり、1978度に目安制度が始まって以降で最高額となります。また、引上げ率に換算すると5.0%(昨年度は4.5%)となります。

これまで政府が目標としてきた「全国加重平均で時給1,000円以上の達成」はすでに2023年度に達成されましたが、都道府県ごとで見ると、依然として1,000円を下回るところも少なくありません。賃金額の地域間格差は、地方部から都市部へ労働力流出、地方の中小企業・小規模事業者の事業継続・発展の困難に拍車をかける一因となることから、地方における最低賃金の底上げは引き続き課題となりそうです。

参考リンク
中央最低賃金審議会「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41785.html


連合 労災保険の団体設立 フリーランスの補償を支援
2024.07.22
労働団体の連合が、企業に属さないフリーランス(個人事業主)を対象とした、労災保険への加入申請や給付申請を支援する団体を設立すると発表しました。

厚生労働省によると、フリーランスで働く人は国内で462万人いるとされていますが、原則、業務でけがや病気になった時に労災保険による補償を受けられません。
このため国は、11月からフリーランスが自己負担で労災保険に加入できる「特別加入制度」の対象業種を拡大する予定です。
こうした動きを受け、労働団体の連合はフリーランスの特別加入を支援する団体を新たに設立することを明らかにしました。
連合によると、団体名は「連合フリーランス労災保険センター」。19日の中央執行委員会で承認され、設立は8月。会費は月600円を予定しています。
加入申請の手続きや、事故が発生した時の労災給付申請の支援、加入者に対する相談や教育などを行うことになります。

連合の芳野友子会長は「曖昧な雇用で働く人たちのセーフティーネットの強化になる。ゆくゆくは安全に健康的に働けるようにし、組織拡大も視野に入れている」と話しました。


財政検証の結果 年金水準30年後2割低下 「現役収入の半分」維持 納付期間5年延長見送り
2024.07.04
厚生労働省は3日、公的年金の健全性を5年に1度点検する財政検証の結果を公表しました。

現行制度では、財政状況が安定するまで給付を自動的に抑制する仕組み「マクロ経済スライド」が導入されています。これを前提に今回の財政検証では、実質経済成長率を4パターン(プラス1・6~マイナス0・7%)で想定し、モデル世帯(厚生年金に加入する夫と専業主婦)の年金水準がどのように低下するかを試算しました。出生率の変動なども考慮しています。
モデル世帯の年金水準は、現役世代の平均手取り収入に対する年金額の割合「所得代替率」で表します。
2024年度は61・2%。経済成長が標準的なケースで57年度に50・4%となり、現在より2割低下する見通しです。その後は下げ止まる見込みで、政府が掲げる「現役収入の半分以上」の水準は維持されるとしています。
また、モデル世帯の年金額は24年度は22万6千円です。標準的なケースでは57年度に21万1千円となります。

厚生労働省は、今回の検証結果について、女性や高齢者の労働参加が進んだことや外国人の増加で、少子高齢化の影響が緩和されたことに加え、株価の上昇を背景に積立金が増えたことなどから、前回・5年前の検証結果より将来の見通しが改善されたとしています。
厚生労働省は、結果を踏まえて、制度改正の議論を本格化することにしていますが、国民年金保険料の納付期間を今の40年から45年に延長する案については、検証結果が改善されたこと、低所得者を中心に負担感が大きく、現状では広く国民の理解を得られないと判断したこと等から見送る方向です。



パートやアルバイトなどの厚生年金加入 企業規模要件を撤廃へ 
2024.06.27
厚生労働省は、パートら短時間労働者の厚生年金加入を拡大するため、勤務先の従業員数が101人以上(10月からは51人以上)と定めている「企業規模要件」を撤廃する方針を固めました。職場の従業員数にかかわらず厚生年金に加入できるようにし、将来受け取る年金額を手厚くする狙いです。対象は約130万人に上るとみられるとのこと。関係者が26日に明らかにしました。

厚労省の有識者懇談会が、企業規模要件に関し「撤廃の方向で検討を進めるべきである」と明記した報告書を7月1日に取りまとめ、これを踏まえて、厚労省が施行時期を検討し、2025年通常国会に関連法改正案の提出を目指すことになります。

現在、短時間労働者が厚生年金に加入するには、企業規模に加え(1)週の労働時間が20時間以上(2)月給8万8千円以上、といった要件を全て満たす必要があります。これらのうち企業規模の撤廃を優先します。厚生年金の保険料は労使折半となっているため、加入拡大に伴い企業側の新たな費用や事務作業が増えるため、中小企業への支援策も検討していく方針です。
また、個人事業所で働く人の厚生年金加入も推進させる方針。現在は従業員5人以上の「金融・保険」など17業種に限り加入義務が生じていますが、これを宿泊業や飲食業にも拡大する方向で調整。対象人数は約30万人を見込んでいます。


社会保険労務士法人 たじめ事務所 TEL.03-3511-0345(平日 10:00~18:00)アクセス