労働時間・休日・休暇
2026.05.12
勤怠システム設定で見落としやすいポイント――社労士が実務で確認する視点
勤怠システムの設定と会社のルール
■勤怠システムの設定では、会社ごとの確認が必要になる

当事務所では、KING OF TIMEの初期設定や、すでに利用している勤怠システムの設定見直しも行っています。実際に設定していると、難しいのはシステムの操作そのものではありません。

会社には、就業規則や賃金規程に書かれているルールがあります。一方で、実際には昔から別の方法で給与を計算していたり、担当者がその都度判断していたり、「なぜそうなっているのか分からないけれど、システムがそう計算している」ということもあります。そのため、設定前には現在の勤怠データや給与計算も確認します。

この時点で集計のおかしさに気付くこともありますが、新しい設定を作り、実際の勤務パターンで試して初めて分かることもあります。普通に9時から18時まで勤務している日は合っている。それなのに、遅刻した日、半休を取った日、休日に出勤した週だけ数字がおかしい。

勤怠設定は、単に「正しい計算式を入れる仕事」というより、その会社が今までどのように労働時間を管理し、給与を払ってきたのかを一度整理する仕事に近いと感じます。

普通の日が合っていても、設定が正しいとは限らない
■遅刻・半休・早出でズレが出る

たとえば、「18時を過ぎた時間を残業とする」という設定。通常どおり9時から18時まで働いている限り、特に問題は見えません。

ところが、日中に通常の休憩とは別に1時間抜けて19時まで働けば、実労働は8時間なのに18時以降の1時間が残業になります。午前半休で13時から20時まで勤務し、1時間休憩すれば実労働は6時間ですが、18時以降だけを見れば2時間の残業です。逆に、8時から18時まで勤務して1時間休憩すれば実労働は9時間ですが、「18時以降」しか見ていない設定では拾えません。

月間の残業合計だけを眺めていると、こうした問題にはなかなか気付きません。設定を確認するときは、通常勤務だけでなく、遅刻、早出、半休、中抜けなど、少し意地の悪い勤務パターンを入れてみる方が問題を見つけやすくなります。

■土曜勤務と週40時間

同じことは、週40時間の集計にもあります。原則として1日8時間・週40時間が法定労働時間です。月曜日から金曜日まで各8時間働き、そのうえで土曜日にも8時間働けば、その週は48時間。1日8時間を超えた日はなくても、週40時間を超えた部分は法定時間外労働になります。一方、月曜日が祝日で休み、火曜日から土曜日まで各8時間なら週40時間です。

それでも旧システムでは、「土曜日=所定休日だから一律1.25倍」と設定されていることがあります。会社が意図して多く払っているなら、それは会社の賃金ルールです。ただ実際には、「そういうルールを決めた記憶はないけれど、昔からシステムがそうなっていた」というケースもあります。

さらに、所定労働時間が7時間の会社なら、7時間を超えて8時間までの時間は、社内では「残業」と呼ばれていても法定時間外労働ではありません。会社でいう残業、法律上の法定時間外労働、給与上割増を付ける時間は、同じとは限らないのです。ここを一つの「残業時間」で済ませようとすると、どこかで合わなくなります。

休日を見ると、その会社の勤怠管理がかなり分かる
■振替休日と代休

休日関係は、勤怠設定を見直すと認識のずれが出やすいところです。法定休日とそれ以外の休日の違いそのものは知っていても、実際の運用になると区別が崩れていることがあります。特に振替休日と代休です。

「休日に出てもらって、別の日に休んでもらっています」と聞いて、振替休日として処理していると思ったら、実際には休日に勤務した後で休む日を決めていた、ということがあります。後から代休を与えても、すでに発生した法定休日労働の割増賃金がなくなるわけではありません。反対に、事前に適切に休日を振り替えていても、別の週へ振り替えた結果その週が40時間を超えれば、時間外割増が必要になる場合があります。

だから「振休」「代休」という項目名だけでは判断できません。いつ決めたのか、何日と何日を入れ替えたのか、その結果各週の労働時間がどうなったのかまで確認します。就業規則がきちんと整っている会社でも、実際の勤怠運用まで確認すると、このあたりが整理されていないことはあります。

■半日・時間単位の休日

休日を半日や時間単位で扱っているケースもあります。会社独自の所定休日を半日にするような制度を設けることとは別に、労働基準法上の法定休日は原則として暦日、つまり午前0時から午後12時までの24時間で与えるものです。「午前中を休ませたから法定休日を半日与えた」といった処理にはなりません。

一方、所定休日について会社独自の柔軟な制度を設ける余地はあります。ただし、そこで勤務した時間をどう払うのか、週40時間を超えていないかは、また別に確認します。一つの処理を柔軟にすると、別のところで確認事項が増える。勤怠設定が難しいのは、こういうところです。

■休日勤務をどう設計するか

実際にあった会社では、休日勤務について社長の考えがかなり明確でした。「休日に出てきてくれるだけでもありがたい。何時から何時まで働いてください、と細かく決めたくない」。さらに、「人件費は抑えたいけれど、休日に働いてもらっているのだから、法律上必ずしも必要でなくても、そこは今までどおり多めに払いたい」という考えもありました。

こういう会社に、法律上きれいだからという理由だけで休日勤務用の9時~18時のパターンを作ると、今度は運用が重くなります。休日勤務を申請し、早く帰れば変更申請をし、休憩時間が変われば修正する。正確に管理するための仕組みが、社員にも管理者にも申請ばかり増やすことになります。

かといって休日だけ完全な自由勤務にすれば、休憩時間の把握、週40時間超の集計、法定休日の処理をどうするかという問題が残ります。給与上は「休日に来てくれた時間には多めに払う」という分かりやすいルールにできても、36協定などの労働時間管理まで同じ考え方では済みません。

そこで、会社が何を大事にしているのかを聞きながら、法律上必要な管理を残し、社員と管理者の負担ができるだけ増えない設定を考えます。法律上必要なこと、会社が社員にどう報いたいか、実際に運用できるか。この3つが必ずしも同じ方向を向かないところに、勤怠設定の難しさがあります。

旧システムとのずれは、直し方まで考える
■残業を多めに数えていた場合

旧システムの設定を調べると、集計のずれは、多めに数えていた方向にも、少なく数えていた方向にも見つかります。たとえば旧システムでは、法定内残業の時間まで割増の対象として集計し、一律25%を上乗せしていた。新しいシステムを賃金規程どおりに設定すると、その分の給与が下がる、というケースです。

この場合、「前のシステムが間違っていただけだから」と機械的に減額できるとは限りません。会社自身が意図して手厚く払っていたなら、その取扱いを残すこともできます。規程には書かれていなくても、長年同じ方法で支給を続けてきた場合には、その経緯も確認が必要です。労働条件の変更は合意が原則で、就業規則による不利益変更についても、不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性などを踏まえた合理性が問題になります。

法律上いくら必要なのか、会社はいくら払いたいのか、これまでの支払いを変更できるのか。この三つは分けて考えます。

■残業を少なく数えていた場合

反対に、旧システムが必要な時間を数えておらず、本来払うべき残業代が足りていなかったと分かることもあります。たとえば、週40時間を超えた時間を集計する設定がなかった、といったケースです。

この場合は、「新しいシステムでは直しました」で終わりにはできません。いつから、どの社員に、どの程度の不足があったのか、過去の分まで確認が必要になることがあります。設定の見直しが、過去の賃金計算の確認まで広がるわけです。

■リスクと改善の優先順位

勤怠設定を確認すると、現在の運用に問題が見つかることがあります。もちろん、未払い残業代が発生するような状態を「分かったうえで、そのままで問題ありません」とは言えません。一方で、何か見つかるたびに「今日から全部、理想形に変えてください」と言うだけでは、実際の会社はなかなか動きません。

過去の未払い賃金まで確認すべき問題なのか。36協定の管理に影響するのか。規程を直す話なのか。申請方法を今後変えていけばよいのか。社員や管理者にどの程度の負担が増えるのか。同じ「設定がおかしい」でも、リスクの大きさは同じではありません。

会社が「少し設定が違う程度」と考えていたものが、確認すると過去の賃金まで遡って検討すべき問題だった、ということもあります。逆に、法律上必要な水準を満たしたうえで、会社が社員のために手厚い取扱いをあえて残すこともあります。

法律上の問題を正確に伝えることと、その会社で現実的にどう改善するかを考えることは両立します。

設定できることと、正しく運用できることは別
■丸めより実際の時間管理

時間の丸めも、よく単純化される話です。「勤怠はすべて1分単位でなければ違法」とだけ覚えてしまうと、実際の労働時間管理の話が抜けます。

日々の労働時間を15分、30分単位で一律に切り捨て、実際に働いた時間分の賃金を払わない処理は問題です。一方、1か月の時間外・休日・深夜労働時間の合計については、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げるといった端数処理が認められています。1日単位で同じ処理をすることは認められていません。

それ以上に確認したいのが、会社が実際に時間をどう管理しているかです。管理者が始業・終業を現認しているのか、タイムカードやPCの使用記録など客観的な記録を基礎にしているのか。厚生労働省も、使用者による現認または客観的記録を基礎として始業・終業時刻を確認・記録することを原則としています。残業許可制そのものが悪いわけではありませんが、会社が実際の残業を把握しているのに「申請がなかったので残業はゼロです」では済みません。

KING OF TIMEのように、社員本人が自分の勤怠を確認する機能があるシステムなら、それを運用に組み込むことで、後から労働時間をめぐって食い違いが起きることを一定程度防げます。

監督署の調査でも、勤怠表に数字が入っていることより、会社として、どう労働時間を把握しているのかを説明できることが大切です。「1分単位にしています」「残業は許可制です」とルールだけを答えると、かえって実際の管理方法について追加で確認されることもあります。

■労使協定が必要な制度

勤怠システムには多くの機能がありますが、機能をONにすればその制度を使えるわけではありません。たとえば、年次有給休暇を時間単位で付与するには労使協定が必要で、年5日以内という上限もあります。年休を会社が指定した日に取得させる計画的付与にも、就業規則の規定と労使協定が必要です。

システム上「時間単位年休」「計画年休」といった処理ができることと、その会社が必要な手続きを済ませていることは別です。設定できるかより先に、その制度を使える状態になっているかを見る必要があります。

■変形労働時間制と勤務予定

1か月単位の変形労働時間制も、単に「月の総労働時間がこの範囲に収まっているからよい」という制度ではありません。変形期間を平均して週40時間以内となる範囲で、各日・各週の所定労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。

そのため、勤務予定をきちんと登録せず、実績だけ後から勤怠システムへ入れても、時間外労働を正しく判定できないことがあります。「打刻さえ取れていればいい」では済まない制度もあります。

給与計算までつなげると、「残業」の意味をもう一度整理する
■残業・時間外・休日労働の区分

ここまでの話は、給与計算や36協定の管理にもそのままつながります。会社で日常的に「残業」と呼んでいる時間が、すべて法定時間外労働とは限りません。所定労働時間を超えていても、1日8時間・週40時間の範囲内なら法定内残業です。さらに、法定休日労働は法定時間外労働ではありません。

ところが36協定の上限管理では、月45時間・年360時間を見る場合と、単月100時間未満・2~6か月平均80時間以内を見る場合で集計対象が異なり、後者では法定時間外労働と法定休日労働を合算します。給与計算上の残業時間は合っているのに36協定の管理がおかしい。逆に、法律上の時間外労働だけを見ていたために、賃金規程どおりの残業代が出ていない。どちらも起こり得ます。

会社でいう残業、法定内残業、法定時間外労働、法定休日労働を、一つの箱で管理することはできません。

■給与ソフトとの連携

こうした区分を決めて、初めて給与ソフトへ何の数字を渡すのかが決まります。当事務所ではKING OF TIMEとマネーフォワード クラウド給与を連携して使用することがあります。両サービスはAPI連携に対応しており、標準項目だけでなく、独自に作成したカスタムデータ項目も条件を整えれば連携できます。

ただ、実務で難しいのはAPIを接続することではなく、勤怠側のどの数字を、給与側のどの項目として計算させるのかを決めることです。似た名前の項目が同じ意味とは限らず、賃金制度によっては、複数の勤怠項目を組み合わせて給与計算用の数字を作ることもあります。システム同士をつなぐことより、何の数字をつなぐのかを決める方が難しいのです。

■固定残業代

固定残業代がある会社では、さらに確認が必要です。「30時間分」と書いてあるだけで、その30時間に何を含めるのかが自動的に決まるわけではありません。法定時間外労働だけなのか、法定内残業も含むのか、深夜割増や法定休日労働を含むのか。裁量労働制や事業場外みなし労働時間制を採用しているなら、そのみなし時間との関係も確認します。

何を固定残業代で支払ったものとして扱い、何を別途支払うのか。そこまで整理して初めて、勤怠側の集計と給与側の計算式を決められます。

勤怠設定で見ているのは、設定画面よりその前提
■設定の前提をそろえる

勤怠設定で扱っているのは、KING OF TIMEの操作方法だけではありません。現在の勤怠を見る。就業規則や賃金規程を見る。実際にどう働いているかを聞く。給与計算と突き合わせる。

すると、「規程と違う」「法律上の区分と違う」「理由は分からないが昔からこう払っている」「法律上はできるけれど、この会社では運用が重すぎる」というものが出てきます。それを整理し、法律上必要な管理を確保しながら、会社の考え方と現場の運用に合う形へ落とし込んでいきます。

勤怠システムを正しく動かすことが目的ではなく、その会社の労働時間管理を正しくシステムに載せることが目的です。

細かく設定できるシステムほど、前提を間違えれば、その間違いも毎月きれいに自動化されます。「システムが計算しているから大丈夫」ではなく、その数字が何を根拠に出ているのかを見る。当事務所が勤怠設定で重視しているのは、そこです。

■システムの専門家と、労務の専門家の役割は違う

勤怠システムの設定というと、システム会社や導入支援会社を思い浮かべる方が多いかもしれません。システムの会社は、設定方法の専門家です。

一方、その設定内容が法律や就業規則、賃金規程、労使協定と合っているか、規程と運用がずれていたときにどう直すかを判断するのは、労務の専門家の領域です。就業規則や労使協定を報酬を得て作成することは、社会保険労務士の業務とされています。

■設定の進め方と、設定後の確認

当事務所では、まず就業規則・賃金規程・労使協定と実際の働き方、現在の勤怠データと給与計算を突き合わせ、ずれがあればどう直すかを会社と決めます。そのうえでKING OF TIMEを設定し、遅刻や半休、休日出勤などの勤務パターンを入れてテストします。給与計算まで受託している会社では、マネーフォワード クラウド給与側の項目や計算式も設定し、最終的な給与額まで確認します。

運用を始めた後も、ご依頼により毎月の勤怠チェックを行っています。打刻のない日が欠勤なのか年休なのかなど、勤怠データだけでは判断できない日は一覧にして会社に確認していただき、システム、社労士、会社がそれぞれ確認する部分を分けて運用しています。

勤怠システムの設定・見直しのご相談
顧問契約のない会社からの勤怠設定のみのご依頼や、すでに導入している勤怠システムの設定見直しにも対応しています。サービス内容は「スポット支援業務」、料金は「料金プラン」をご覧ください。給与計算まで含めたご依頼は「労務アウトソーシング」でお受けしています。

AIやExcelを使って勤怠管理そのものを作る場合については、「AIで勤怠システムは作れるのか――専用の勤怠システムはもう不要?」で取り上げています。

※本記事は2026年5月時点の法令・公表資料および各サービスの公開情報をもとに整理しています。具体的な取扱いは、各社の就業規則、賃金規程、労働時間制度、労使協定、これまでの運用によって異なります。

田治米 洋平
特定社会保険労務士 (全国社会保険労務士会連合会 登録番号13060418)
1980年大阪生まれ。同志社大学卒業。IT企業勤務を経て、2006年たじめ労働法務事務所を創業。2013年青山学院大学大学院修了。「ゲーム開発企業における専門業務型裁量労働制の法的問題と実務的課題」優秀賞受賞。2017年、社会保険労務士法人たじめ事務所へ組織変更、代表社員就任。
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